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をえない家
2024〜
せざるを得ない空き家への試作として
静かな住宅街の一角。高齢化が進む街並みに、空き家がぽつりぽつりと現れる。
解体して土地を売ろうとしても、地価の低い北海道の地方では解体費用が販売価格を上回り、容易には取り壊せない。場所によっては、倒壊寸前の廃屋が風景を占めてしまうところもある。
1970年代にニュータウンとして開発された住宅街も、半世紀を経た今、札幌近郊で地価が伸びなかったエリアでは空き家が目立つようになってきた。今回の敷地周辺も、主要道路やJR路線に近く利便性は悪くないが、それでも空き家が増えつつある。
そのひとつを縁あって手に入れ、自社のショールーム的な用途を兼ねて改修を試みている。
取り掛かりはまず、残されたものたちの整理から。使える木材はできる限り残し、再びここで新しい役割を与える。単に費用を抑えるためではなく、家の記憶を継承するためでもある。断熱材やサッシなど、劣化の大きい部分は新調し、高断熱仕様ほどではないが必要十分な性能を備えさせた。
2階床の一部を抜いて吹抜けを設け、光と風を呼び込む。扉や間仕切りは最小限にとどめ、ひと続きの大きな空間をつくる。断熱や設備も必要最低限にとどめ、完璧に仕上げるのではなく、住みながら少しずつ手を入れ、余白を残すことを大切にした。
空き家は、これからさらに増え続ける社会的課題である。改修には廃棄物処理や法的な制約、資材価格の高騰などが影を落とす。最適解はまだ見えていない。それでも、せざるを得ない状況は確実に目の前に来ている こうした小さな試みを重ねることが、次の可能性を探るための確かな一歩になると考えている。
北海道岩見沢市
用途:
ショールーム住宅
建築面積:
延床面積:
構造:
リノベーション
工事種別:
設計:Qukan 施工:高瀬建設+Qukan
撮影:
在来木造2階建
敷地:
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